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No.320話:「知らなかった」では済まないマイカー通勤事故。

「業務中の事故だから会社に責任があるのは当然」と考えている経営者は少なくありません。しかし、多くの経営者が見落としているのは、「私用車(マイカー)の業務利用」や「自転車での通勤途中の加害事故」であっても、会社が数千万円から億単位の損害賠償責任を負うリスクがあるという現実です。

民法第715条に定める「使用者責任」、および自動車損害賠償保障法第3条の「運行供用者責任」により、会社は従業員が事業の執行につき第三者に与えた損害を賠償する義務を負います。ここで重要なのは、「会社名義の車かどうか」ではなく、「その運行が会社の事業活動と密接に関連しているか」という点です。

例えば、次のようなケースでは、会社に「使用者責任」や「運行供用者責任」が認められる傾向にあります。

 

マイカーの業務流用: 会社の許可なく、従業員が自分の車で営業先や現場へ移動中に起こした事故。

通勤途中の事故: マイカー通勤(自転車通勤も同じ)を認めている場合や、直行直帰の途中で起こした事故。

私用運転中の事故: 会社の社用車を休日に私用で運転させていた際の事故。

 

裁判例でも、会社が「マイカーの業務利用を厳禁していた」と主張しながらも、実態としてそれを黙認していた場合や、業務上の必要性から使わざるを得ない状況を放置していた場合には、会社の管理責任が厳しく問われています。万が一、人身死亡事故などが発生すれば、賠償金だけでなく会社の社会的信用も一瞬で失墜しかねません。

では、経営者はどのような対策を講じるべきでしょうか。最大の防衛策は、「実態に即した車両管理規程の策定」と「運用の徹底」です。

 

〇マイカーの通勤・業務利用の「完全許可制」の導入

マイカー(自動二輪、自転車含む)での通勤や業務利用を認める場合は、申請・許可制を徹底します。任意保険の加入(対人無制限・対物任意設定以上など)を必須条件とし、毎年保険証券のコピーを提出させることが不可欠です。

 

〇アルコールチェックと点呼の厳格化

道路交通法の改正に伴い、運送業以外の事業所でも乗車前後のアルコールチェックの義務化が進んでいます。チェックを怠った状態で事故が起きれば、会社の安全配慮義務違反・監督責任は免れません。

 

〇直行直帰や社用車持ち帰りのルール化

社用車の私用使⽤を原則禁止とし、やむを得ず持ち帰らせる場合の運行ルートや管理責任を明確にします。

 

車両トラブルによる企業リスクは、「現場任せ」の運用から生まれます。経営者自身がリスクの境界線を正しく理解し、規程の整備とチェック体制を構築することこそが、会社と従業員の双方を守る最良の経営判断といえます。

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