『人事労務戦略』構築専門のコンサルタント 株式会社サムライズ

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No.323話:使用者自らによる「安全配慮」の取り組みが不可欠です。

労務管理における「安全配慮義務」と聞くと、工場での事故防止や作業中の安全対策といった物理的リスクへの対処を思い浮かべる経営者も少なくありません。しかし、労働契約法第5条が定める「生命、身体等の安全」の対象には、現代社会において心身の健康、とりわけ「職場のハラスメント」による「メンタルヘルス不調」が極めて大きな割合を占めるようになっています。

このような背景のもと、パワーハラスメント防止措置の義務化をはじめ、法整備は急速に進んでいますが、単に法律に沿った規程を設けるだけでは「義務を果たしている」ことにはなりません。ハラスメントや過重労働によるうつ病等の発症は、裁判例でも使用者の安全配慮義務を講じたかがは厳格に求められる領域です。では、企業として持続的に成長するためにはどのような対応が必要でしょうか。

 

〇実効性のある体制構築と予防的アプローチ

規程の作成や相談窓口の設置は第一歩に過ぎません。重要なのは、その窓口が機能しているか、そして早期発見・早期介入の仕組みがあるかが問われています。

定期的なストレスチェックと職場環境改善

ストレスチェックによる集団分析結果を活用し、高ストレス部署の業務量調整や人間関係の改善に直結させます。

ラインケア・セルフケア教育の徹底

管理職に対しては「業務指導とハラスメントの違い」を理解させ、あわせて部下の変化に気づく視点を養わせます。

 

〇留意すべきは「過度な配慮」と「放置」のバランス

安全配慮義務を果たそうとするあまり、過度な配慮により現場の業務が立ち行かなくなるケースや、逆に現場の声を軽視して放置してしまうケースが見受けられます。

主治医・産業医との連携

休職・復職対応や配慮措置の判断は、感情や客観性のない主観に頼らず、必ず産業医等専門家の意見に基づき論理的に行います。

公平性と業務上の必要性の是正

一人の従業員への不必要な配慮が、他メンバーの業務過多や不満(二次的なハラスメントリスク)を生んでいないか、全体を俯瞰した調整が不可欠です。

 

〇「リスク回避」から「エンゲージメント向上」への昇華

安全配慮義務を「訴訟を防ぐための守りの労務管理」と捉えるのは好ましくありません。安全で安心して働ける職場環境が確保されて初めて、従業員は持続的なパフォーマンスを発揮できます。心身の健康配慮を経営の最重要課題と位置づけることが、優秀な人材の定着や企業のブランド価値向上へと直結します。

 

現代の労務管理に求められるのは、法的な要件を満たす形式的な対応を超え、従業員一人ひとりが健やかに能力を発揮できる実効性のある組織風土の構築です。使用者が主体的に取り組む「安全配慮義務の徹底」こそが、健全な企業経営の最強の土台となると認識する事が不可欠です。

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