『人事労務戦略』構築専門のコンサルタント 株式会社サムライズ

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No.331話:単なる「遵法」から「手厚い個別対応」の時代へ。

労務コンサルタントとして多くの企業様を支援する中で、近年強く実感するのが「使用者に求められる労務管理上の法的義務の急増と、その質的変化」です。かつては労働基準法や労働安全衛生法を守り、労働時間管理や三六協定、健康診断等を適切に行っていれば、労務管理の「基礎」は十分とみなされていました。しかし現在、その前提は大きく覆りつつあります。

各種ハラスメント(セクハラ・パワハラ・カスハラ等)防止措置をはじめ、育児・介護に直面した従業員への「個別の制度説明や意向確認の義務化」、さらには同一労働同一賃金に基づく「非正規雇用労働者に対する待遇差の説明義務」など、使用者に課される役割は爆発的に拡大しています。

ハラスメント防止措置を怠り、従業員がメンタル不調に陥った場合、会社は安全配慮義務違反として「不法行為責任(損害賠償責任)」を問われます。また、育児休業に関する説明や意向確認を怠ったことで従業員が手当を受給できなくなった場合なども、同様に「手続上の不配慮」を理由に損害賠償を請求される訴訟ケースが実際に生じています。すなわち、行政からの指導や是正勧告にとどまらず、「従業員からの直接的な訴訟リスク」に直結するフェーズへ入ったという認識を、使用者や人事担当者は強く持つ必要があります。

そこで、このような変化の時代を乗り切り、企業を守りつつ従業員と良好な関係を築くために、使用者が特に気をつけるべき実務上のポイントを3つご提案します。

 

〇「仕組み(プロセス)」での管理

個別対応が増えるほど、人為的ミスや対応漏れが発生しやすくなります。育児・介護の申出があった際のフロー、40歳到達時の情報提供のタイミング、ハラスメント相談が寄せられた際の初期対応などをテンプレート化し、「誰が対応しても漏れがない業務プロセス」を構築しましょう。

 

〇「説明・意向聴取の履歴」の確実な証拠化

「説明した・聞いていない」「相談した・対応してくれなかった」という「言った・言わない」の水掛け論は、企業にとって最大の弱点となります。面談記録やメールの送信履歴、説明資料の配布実績などを「書面(またはデータ)として残す習慣」を徹底することが重要であり、万が一の際の強力な防御壁となります。

 

〇経営陣・管理職の「認識のアップデート」

どれほど制度や相談窓口を整えても、現場の管理職が「ハラスメントくらいで騒ぐな」「育休を取るなら評価を下げる」といった旧態依然とした認識を持っていれば、一瞬で企業リスクへと発展します。定期的な研修等を通じ、労務管理のフェーズが変わったことを全社的に周知徹底することが不可欠です。

 

労務管理における「うっかり」は、もはや単なる事務ミスではなく、企業の信用と経営を脅かす重大なリスクとなり得ます。時代の変化を正しく捉え、攻めと守りの両面から実務を見直していきましょう。

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